ボルドーは疑うことのない世界最高のワイン産地です。
ボルドー市を中心に広がる地域一帯をボルドー地方というワイン生産地域としてくくっていますが、ボルドー市そのものは物理的にも規模が大きく、文化的価値のある街でしょう。
ジロンド川に面して市街のある立地は貿易のかなめとして重宝し、ボルドーの人たちは2000年もの間ブドウを育ててワインを造り、そして売りさばいていたのです。
実際にボルドーの街を歩くと、街並みは古くからある地方の大都市というイメージで、観光客向けのきれいに整った通りもあれば、一方でナイトビジネス中心の歓楽街があったりします。
ボルドーワインは、まずは大まかに生産地域を押さえて、そのあとに細かい村とかシャトーとかを覚えていくことになります。
ここではまず、大きな枠組みとしての生産地域を押さえ、ボルドーワインの全体像を見てみることにしましょう。
ざっくりとお読みいただいたうえでそれぞれのリンク先を参考にしていただければ、きっとボルドーワインの全体像がつかめるでしょう。
Contents
ボルドーワイン
ボルドーワインのキーワード
生産地域に入る前に、ボルドーワインを親しむうえでどうしても避けて通れないキーワードがあります。
世界一のワイン都市なのでキーワードもそれこそ多数になってしまうのですが、ここでは絞りに絞って厳選してご紹介します。
キーワード①商人のワイン
ボルドーは早くから港町として栄え、そのためワインだけでなく貿易品目は多岐にわたり、商業の街としての一面もあります。
ブルゴーニュはドメーヌのワインといわれ、生産者が直接ワインと深く結びついているのですが、ボルドーはビジネスターゲットとしてのワインというイメージで今日まで存在しています。
詳しくは、ボルドーワインの歴史をご参考ください。
キーワード②シャトー
ブルゴーニュのドメーヌに該当するキーワードは、シャトーです。
シャトーはもともとフランス語で城という意味で、その名のとおりブドウ畑の中に不自然なほど瀟洒なお城が存在しています。
そして、現在のボルドーは、高級ワインはほぼすべてがシャトー元詰めといって、自ら栽培、醸造、熟成、瓶詰めをしています。
キーワード③1855年の格付け
1855年に国家主導の形でボルドーワインはメドックを中心にシャトーに格付けが行われています。
当時の流通価格や専門家たちの意見をもとに決めたのですが、根拠に乏しく、中には恣意的な意図を感じる結果も多かったのです。
さらに、1855年に行われてから現在まで、社会・掲載は激動の時代を送ったにも関わらず格付けを見直されることはありません。
一部の例外を除き100年以上前の格付けが現在でも通用しているのです。
厳選したこの3つのキーワードを押さえ、いよいよ生産地域をざっくりとみてみましょう。
メドック
メドック地区は、ボルドーのジロンド川流域にある生産地域です。
メドックの中でも、特に優秀なワインを生産するAOCとして、
等があります。
シャトーラフィットロートシルトやシャトーマルゴー、ムートンロートシルトなどの世界で最も有名なシャトーワインはここで生産されます。
カベルネソーヴィニヨンを主体に、メルローを混醸(アサンブラージュといいます)し、滑らかな渋みと豊かな果実味、柔らかくふっくらとした酸味のバランスの取れたワインになります。
ワインを勉強したいけど、何から手を付けていいかわからない、という人はまずはメドックのワインから楽しんでみてはいかがでしょうか?
グラーヴ地区
グラーヴはメドックよりも上流域にあって、1級ワインのシャトーオーブリオンがある生産地区です。
メドックは粘土質土壌なのに対してグラーヴ地区はその名のとおり砂利(フランス語でGRAVE)質土壌です。
実際にグラーヴの畑を歩くとまさに砂利の採掘場所のようにきれいな砂利が見受けられます。
土壌が違うことでメドックとは明らかに違う味わいがあって、熟成することによって腐葉土のような土の香りが強くなります。
メドックと違い、赤ワインだけでなく、白ワインも生産しています。
格付けワインにも白ワインがあり、ソーヴィニヨンブランとセミヨンから造られ、複雑でどっしりとした味わいのワインになっています。
ボルドーワインの歴史を見ると、グラーヴのほうが先に注目されたにも拘わらず、その後にメドックに完全に追い抜かれ、格付けがされたのが1953年と、メドック格付けの100年後だったのです。
サンテミリオン地区
サンテミリオン地区は、メドックやグラーヴと違いメルローを主体に生産されます。
メルローはカベルネソーヴィニヨンに比べると渋みや酸味が穏やかです。
そのため熟成が早く進み、5年くらいするとオレンジ色が強く見えるようになります。
熟成が進みやすいということはそれだけ複雑な味わいになりやすいということで、これがサンテミリオンワインの魅力でもあります。
サンテミリオンの名前は、お酒は飲まないけど田舎暮らしが好きだったブルターニュ出身の巡礼者、聖エミリヨンにちなんでつけられたとされています。
ポムロール地区
ポムロールもサンテミリオン同様、メルロー種を主体に熟成感のあるワインを生産しています。
ポムロールは1980年代になるまでほとんど知られていなく、ボルドーワイン全体から見れば”新参者”の扱いです。
そのためほかのメドック、グラーヴ、サンテミリオン、ソーテルヌと違って格付けがされたことが一度もありません。
実際に訪れてもこれといった観光名所もないため忘れられた地区だったのです。
ワイン評論家が1980年代に台頭し、それによってワインの品質が紹介されるようになると一気にボルドーワインの注目の的になるのです。
実際に平均してみるとほかの地域と比べると水準が高く、小さな面積、小さなシャトーと相まってブティック的な扱いを受けることになります。
ソーテルヌ
これまでの重厚な辛口ワインでしたが、ソーテルヌは世界に誇る貴腐ワインの産地で有名です。
川の支流が入り組んでいて、そのため収穫期になると霧が立ち込め、これによって貴腐菌(ボトリティスシネレア)が繁殖しやすい環境になります。
ソーテルヌ地区のワインはブドウ品種がソーヴィニヨンブランとセミヨンですが、二つとも果皮が薄いため貴腐菌が細かい穴をあけ、これによって水分が蒸発して甘味の強いワインとなるのです。
世界で一番有名な貴腐ワインのシャトーディケムはここで生産されています。
ソーテルヌのほかに、実際にはバルサックという村があって、これも無条件でソーテルヌと名乗れます。
バルサックの各シャトーは自己都合でソーテルヌと名乗ってもいいし、バルサックと名乗ってもいいのです。
アントルドゥ―メール
ボルドーの上流域のガロンヌ川とドルドーニュ川にはさまれた広範囲なエリアで、気軽に飲めてさっぱりとした口当たりのワインを生産しています。
ほとんどが白ワインですが、若干量の赤ワインを生産しています。
日本のワインショップやコンビニでも1000円台で購入することができて、ソーヴィニヨンブランの快活な味わいを楽しめますので、デイリーワインに最適です。
いかがでしょうか。
おおよそここに挙げた地区を押さえることで、ボルドーワインの全体像をとらえることができます。
もし余裕がある方は、それぞれのリンク先に詳しい紹介がありますので、ぜひそちらで新しい記事をご覧になってください。