ワイン用語集フランスワインボルドー地方

シャトーアンジェリュスとは?その特徴と歴史

 

シャトーアンジェリュス(CHATEAU ANGELUS)は、サンテミリオン格付け第一特別級Aに指定されている高級ワインです。

もともとワインの評価は高く、特別級に格付けされていましたが、2012年にシャトーパヴィとともに最高位に指定を受けました。

1996年には第1特別級Bに、2012年には第1特別級Aに昇格は異例のスピードでしょう(よほどうれしかったのかユーモアか、ラベルのAをわざわざダブルクォーテーションで”A”と囲んでいます。)。

急速に品質を向上させ、さらに評価を一変させたことで世界中のワイン業界を驚かせたシャトーでもあります。

現在の評価はボルドーはもちろん世界で見てもトップ中のトップで、ワインアドヴォケイトの点数でいえばメドックの5大シャトーと比べてもひけをとりません。

現在の日本でのワインショップでの価格はヴィンテージによって4~7万円前後ですが、まだA級に昇格して間もないためか同程度の評価のほかワインに比べて控えめといえるでしょう。

インパクトのある評価が続けば価格はさらに大きく上昇する可能性があります。

 

シャトーはサンテミリオンの市街の東側、シャトーオーゾンヌから見ると西の奥手にあって、ボーセジュールの横に位置しています。

サンテミリオンの中でも東側のコートと呼ばれる丘の上のサンテミリオンの街を中心に衛星状に散らばっているシャトーのグループにあります。

サンテミリオンの丘の高いところは標高75メートル程度ですが、これが丘の低地だと35メートルくらいで、同じサンテミリオンの中でさほど離れていなくても結構な標高差です。

畑の基層は堅い石灰岩の岩盤になっていて、ここにぶどうの根が割り込んで土中の諸要素をワインに反映させるのです。

いわゆる「丘もの」ワインの特徴で日照量に恵まれ、これがアンジェリュスの濃密でパワフルな印象に直結しています。

 

映画ファンにはたまらない人もいるかもしれませんが、ダニエル・クレイグの「007 カジノロワイヤル」の印象的なシーンでこのシャトーは登場します。
 
クレイグ演ずるジェームスボンドは後に死に別れる恋人ヴェスパーと車中でこのワインを飲みながら語らうのです。
 
カジノロワイヤルは2006年の作品ですが、なんと前年の2005年ヴィンテージは後にワインアドヴォケイトで100点満点をかっさらい、一躍世界のプレミアムワインの仲間入りを果たします。
 
もちろんマーケティング的な意図があったかもしれないのですが、当時からすでに世界のトップワインになるだろうということは予想できる状況でしたので、先取りする形で採用されたのかもしれません。
 
ダニエル・クレイグは初のボンド役で、とてつもないプレッシャーの中、アンジェリュスの味わいはどのように感じたのでしょうか。

 

 

栽培面積は26ヘクタール、年間生産量は9万本とこのてのワインとしてはすくなくはないのですが、日本ではあまり見かけることのないシャトーです。

メルローカベルネフランがおよそ半分ずつで、若干のカベルネソーヴィニヨンが加わります。

セカンドワインは ル キャリオン ド ランジェリュス(Le carillon de l’Angélus)です。

ここのシャトーは見た目も美しく、醸造所もモダンで、南向きの畑が見渡せる光景の絶好のロケーションにあります。

↑画面を見て右側がシャトーアンジェリュスで、このまままっすぐ進むと南向きの広い斜面に出ますが、これが大変に美しく訪れるゲストを魅了しています。

ここはワイン造りとともにマーケティングにもたけていて、モダンな醸造所とともにサンテミリオンの人気スポットとしても知られています。

運良く訪れることがあった日には、思い出してみてはいかがでしょうか。

 

 

シャトーアンジェリュス

”お告げの鐘”という名の名シャトー

1782年、フランス王の近衛騎兵、ジャン・ド・ブアール・ド・ラフォレがサンテミリオンに居を構えました。

1795年、その息女カトリーヌがシャルル・スフラン・ド・ラヴェルニュと結婚します。

このシャルルが当時のシャトー・マゼラを所有していて、これがシャトーアンジェリュスの前身となります。

 

やがてシャトーは息子のジャック・ジェルマンに引き継がれ、その息子、銀行家のシャルルに託されます。

シャルルはウージェニー・シャトゥネと結婚しますが、子宝に恵まれませんでした。

 

1888年にシャルルが、1910年にウージェニーが亡くなった後、シャトーは縁戚関係にあるモーリス・ド・ブアール・ド・ラフォレに遺贈されます。

モーリスはシャトーの規模拡大に尽力。

1920年、近接する3ヘクタールほどの土地を買い足し、シャトー・ランジェリュス(L’Angelus)が誕生しました。

 

アンジェリュスの名前はこの1970年代に合体させた畑のころに名付けられ、当時はアンジェリュスの前にLを置いてl’angelusとしていました。

近所の3つのお寺の鐘が同時に聞こえてきて、これが印象的だったのか、畑は鐘の意味のアンジェリュスと呼ばれていたために名付けられたのです。

そのためラベルには鐘のイラストが挿入されていて、インパクトのある仕上がりになっています。

 

シャトーはその後、代々引き継がれていきます。

現オーナーのユベールは優秀な醸造家でありながら広報にも長けた人物です。

まず、L’Angelusと表記されていたものから冠詞を取ってAngelusにします。

これにより発音しやすくなったばかりか、アルファベット順にリスト・アップされたとき常に、最初に数えられるようになりました。

1979年からボルドー大学のパスカルガイヨン教授に学んだユベールが管理し、ミシェルロランをコンサルタントに迎えて徐々にワインを変えていきます。

従来コンクリートタンクで長期の熟成をさせていたところを新樽に切り替え、収穫量を極端に制限します。

このやり方は、新星ガレージワインの世代からインスピレーションを得たようなものですが、それをアンジェリュスなりのやり方でやってのけたのです。

その結果、「これぞ現代のボルドーワイン」と言えるほど色が濃く、滑らかで濃密なアロマのワインが出来上がったのです。

 

元々サンテミリオンのワインはメルローの品種の特性から、メドックに比べてエレガントで明るい色調が特徴です。

そこを色が濃く、濃密でパワフルな味わいのワインを世に出したものだから、周りの伝統保守のシャトー関係者は当初まゆをしかめました。

しかし、その評価がワイン業界で浸透するとともにその実力を認めざるを得なくなり、現在ではサンテミリオンのなかでも重要な存在となっています。