バニュルスは南フランス、ルーション地方の酒精強化ワインです。
酒精強化ワインはVDNとVDLとに分かれますが、バニュルスはVDNで、発酵途中のワインにアルコールを添加して発酵を中断して、そのため残った糖分が甘味となるのです(フランス語でミュータージュといいます)。
この製法はポルトガルのポートワインやマディラ、イタリアのマルサラなどがありますが、これらが世界的に知られているのに対してバニュルスは日本ではほとんど知られていません。
ただし品質そのものは大変に高く、上質のポートと比べてもそん色ありません。
深みのある果実味と甘味、それを補うふっくらしたアルコールの印象は、食後のデザートやチーズにぴったりです。
ワインショップやレストランで見かけたときは、ぜひお試しください。
バニュルス
南フランスの酒精強化ワイン
バニュルスは南フランスのルーション地方の中でもバニュルスシュールメールを中心とする4つのコミューンが生産地域です。
指定されたワインのタイプは赤、白、ロゼですべてVDNです(スティルワインはコリウールという別のAOCになります)。
もっとも、バニュルスは赤がメインで白とロゼはあわせても全体の20%程度しか生産されていません。
ブドウ品種はグルナッシュが50%ですが、上級のAOCにバニュルスグランクリュがあり、こちらは赤のみのAOCでグルナッシュが75%以上になっています。
(ここはソムリエ試験やコンクールではよく出題されるので、必要な方は押さえておいてください)
シスト土壌(花崗岩質土壌)なので、ざらざらした小石の混じった土壌で、これが昼間に太陽光を蓄え、夜間に放出します。
そのためブドウはどんどん新代謝が進み、糖分を上昇させるのです。
ワインの特徴
ワインはルビーポートと同様の濃い色調のガーネットで糖分とアルコールの甘味を十分に感じるものです。
生産量がポートに比べて少なく、日本にはほとんど紹介されていません。
また、価格もポートワインと比べて高価なのでなかなか選ばれる理由が見出しにくいのかもしれません。
もっとも酒精強化ワインの中ではアルコール度数は低く、ここがポートワインとの決定的な違いです。
食後のデザートやチーズに合わせて甘口ワインをお探しの時に、バニュルスを知っていることでワインのレパートリーが増えます。
ポートよりも繊細でアルコールが押さえめのワインをお探しの時にソムリエに相談されてみてはいかがでしょうか。
飲み方のコツ
バニュルスは甘口ワインの赤ワインですが、通常の赤ワインと同様の18度くらいで飲むと甘味とアルコールが強く感じてしまいます。
そのため若干冷やし気味に15度前後で飲み始め、少しずつ上昇する温度を楽しむというのがベストでしょう。
また、酒精強化ワインなのでがぶがぶ飲むタイプのワインではありません。
小ぶりのチューリップグラスに少しずつ注いで少量を口に含んで楽しみましょう。
日本ではなかなか目にすることのないワインですから、バニュルスを飲むという目的でなければ口にすることはないでしょう。
できれば事前の知識を仕入れて気分を盛り上げて飲むと、より一層味わいも深くなります。
合わせる料理
豊かな甘みと果実味、そして渋味が特徴のワインです。
塩分の強いロックフォールチーズやゴルゴンゾーラなどは、強い塩分と風味をバニュルスの甘味と風味が中和させてくれます。
クラッカーに乗せたチーズにバニュルスがあれば、最高のマリアージュでしょう。
また、バニュルスはチョコレートとの相性が定番とされています。
カカオのような香りと滑らかな渋みにチョコレートとの類似点があり、これが抜群の相性となるのです。
例えばフレンチレストランで食事を楽しんだ後に、一杯のバニュルスと生チョコレートがあれば、それだけで食事の完成度が上がるでしょう。