
コトー デュ レイヨン(COTEAUX DU LAYON)は、ロワール川流域のアンジュー地方にある甘口白ワインのAOCです。
ロワール川の支流であるレイヨン川流域に位置しており、広大なワイン産地です。
レイヨン川は蛇行していて、この影響により霧が発生しやすく、貴腐ワインを生産しやすい地域として知られているのです。
指定栽培面積は1700ヘクタールと広いのですが、これは階層的に基礎となるAOCとして認定されているためです。
後述しますが生産されるワインのすべてがコトーデュレイヨンとしてリリースされるわけではありません。
年間生産量は47500ヘクトリットルと多いのですが、日本ではソーテルヌの陰に隠れて知名度が相対的に低く、そのため価格がおさえめになっています。
上質ではっきりした果実味と豊かな香りは食後のデザートにもピッタリでしょう。
高品質な甘口ワインがご自宅にあると、ワインライフがより一層広がります。
ワインショップでも比較的に見つけやすいので、覚えておいてみてはいかがでしょうか。
コトーデュレイヨンは、↑の地図のシャロンヌシュールロワールの駅から南にあるレイヨン川の流域で生産されます。
レイヨン川はロワール川の支流で、ここをもう少し北西に進むと合流します。
お暇な時でいいのでこのレイヨン川を東南に遡ってみてはいかがでしょうか。
蛇行しているので中にはちょうどいい南向きの丘陵地域があって、お察しのとおり、ここに目を付けた飲兵衛の権力者がブドウを植えた(植えさせた)のがここのワインの始まりです。
コトーデュレイヨン
ワインの全体像
コトー デュ レイヨンは、メーヌ エ ロワール県の27もの村で認められています。
その中でもコトー デュ レイヨン ヴィラージュは格上のアペラシオンとされており、6つのコミューン名↓を加えてラベルに表記することが出来ます。
Beaulieu-sur-Layon
Faye-d’Anjou
Rablay-sur-Layon
Rochefort-sur-Loire
Saint-Aubin-de-Luigné
Saint-Lambert-du-Lattay
コトー デュ レイヨンでは甘口の白ワインのみを生産しており、遅摘みワインや貴腐ワインが生産されています。
使用するブドウ品種は、ピノー ド ラ ロワールとも呼ばれているシュナン ブランであり、34g/L以上の残糖が必要とされています。
わかりづらいのが、このエリアはあまりにも蛇行が激しいのでそれぞれの地区に向くワインのタイプがまちまちで、そのためAOCの構成が厄介になっているのです。
あまり詳細にならない程度に紹介をすると、
・レイヨン川の流域で生産される甘口白ワインをコトーデュレイヨンと称することができる
・コトーデュレイヨンには前述の6つの特定地域があって、それらはコトーデュレイヨンの後に名前を付けることができる
・レイヨン川のエリアのうち、特定の地域の上質ワインがあって、カールドショームとボンヌゾーの二つは独立したAOCになっている
・それらとは別に、赤、白、ロゼも生産できて、アンジューというより広域のAOCがある。
これさえ押さえれば理解はぐっと深まるでしょう。
カールドショーム(QUARTS DE CHAUME)
レイヨン川の流域のうち、ボンヌゾーとカールドショームは別格の扱いを受けていて、ショーム村(正確にはロッシュフォールシュルロワール)でカールドショームは生産されます。
カールドショームのカールはクオーター、つまり「ショームの四分の一」という意味です。
これはここの畑でできるワインがあまりにもおいしいものだから、生産したワインのうち4分の1はご領主さまに献上しなければならない決まりがあったためにつけられたとされています。
この場所に目を付けたご領主さまはなんと目利きのある人だったことか。
カールドショームのボトルを開けるときは、4分の3まで飲み進めたころに、
「ここから先はご領主さまのものだったのか・・・」
と思いをはせてはいかがでしょうか。
なお、ボンヌゾーにつきましては、こちらをご覧ください。
ワインの特徴
コトー デュ レイヨンでのワイン造りは、ロンスレ修道院の下で甘口ワインの生産が始まりました。
高アルコールである貴腐ワインや遅摘みワインは、長い輸送に耐えることができるため輸出に適していたのです。
17世紀にはオランダ商人によって販路が拡大し、輸出されていきました。
貴腐ワインはボルドー地方のソーテルヌのイメージが強く、AOCに認定されてはいますが、コトー デュ レイヨンは日本ではあまり有名ではありません。
しかし、ボンヌゾー、カール ド ショームと共にロワール地方の三大貴腐ワインとされており、とても高品質な甘口ワインが生産されています。
評価の高い生産者に
Chateau Soucherie、Domaine Cady、Domaine Delesvaux、Domaine des Baumard、Jo Pithon、Chateau du Breuil
などがあります。見かけたらぜひお試しください。
楽しみ方のコツ
前述のようにコトーデュレイヨンは品質の割に知られていないので価格が押さえめのコストパフォーマンスの良いワインです。
デザートワインというとどうしても高価になりがちで、そうなるとご家庭でも飲食店でもなかなか手が出せないことも多いかもしれません。
このような場合はコトーデュレイヨンから試してみるのはいかがでしょうか。
温度は10度程度で小ぶりのチューリップグラスで問題ありません。
飲み切らなくても栓をして冷蔵庫で置いておいても、糖分やエキス分が高いため品質の劣化がしにくいワインです。
コトーデュレイヨンは繊細な味わいの甘口ワインです。
そのためパティシエがしっかりと作りこんだお菓子やレストランのデザートなどがいいでしょう。
もちろんご家庭でも、例えばマスカルポーネチーズのクリームと合わせたティラミスでも合わせやすくなっています。
また、産地のロワール河はシェーブルチーズでも知られています。
シェーブルは塩味もクセも強く、そのままでは苦手な人も多いかもしれません。
ところがコトーデュレイヨンなどの甘口ワインと合わせると不思議とそれらが中和され、大変に喜ばれる組み合わせです。
一度お試しいただいてはいかがでしょうか。