
シャトー フィジャック(CHATEAU FIGEAC)は、サンテミリオンのプルミエ グラン クリュ クラッセBに格付けされているシャトーです。
ボルドー最古のシャトーのひとつとして知られ、セカンド ワインはラ グランジュ ヌーヴ ド フィジャックです。
シャトーシュヴァルブランに近く、そのせいかシュヴァルブランの陰に隠れて割を食っているシャトーといえます。
ここのシャトーは1990年代に評価を落とし、陰りを見せたのですが、その後の努力によってシュヴァルブランと肩を並べるほどの品質を回復します。
もっとも、1996年にはクラスAに格付けされるのではないかとのもっぱらのうわさでしたが、それはかないませんでした。
ラベルもそうなのですが、ワインの造りも派手さがなく、地道にワイン造りをしている印象があって、そのせいか大衆受けしにくいシャトーかもしれません。
逆に言えばじっくりとおいしいワインを飲みたいというときにこそシャトーフィジャックはお勧めできますし、飲む側を決して裏切ることのないシャトーといえます。
栽培面積は約40ha,生産量は18000ケースとサンテミリオン最大で、かつ最古を誇るシャトーです。
そのため日本のワインショップでもほかの格付けシャトーに比べて見つけやすいでしょう。
サンテミリオンは、ざっくりと分類すると二つの地質的環境で構成されています。
一つはこの村の東側半分の丘の上のサンテミリオンの街を中心にして衛星状に散らばっているシャトー郡です。
丘にある畑の良さは水はけと日照量の享受になりますが、同時に雨に降られると表土が押し流されるデメリットもあります。
もう一つは村の北西部に固まっているシャトー郡で、丘のほうは標高75メートルに比べるとここは標高35メートルと、結構な差になっています。
低地のほうは、水はけや日照量の享受は丘に負けてしまいますし、霜に弱く、実際に1956年に低地のサンテミリオンは晩霜で壊滅的にやられてしまうのです。
そのかわりというと後付けのような気がしますが、低地のほうは砂利に恵まれていて鉄分に富み、これがワインに深みをもたらすのです。
シャトーフィジャックはサンテミリオンの西端にあって、低地のほうのシャトーです。
ということは、
「天候や気温の影響を大きく受け、それだけ栽培農家のかたの手のかかったワインなんだ」
と同時に、
「出来上がったワインはより深みがあって、土壌の諸要素を吸い上げたワインなんだ」
という仮説が立てられます。
お飲みの際は思い出していただくことで、また味わいも違ったものになってくるでしょう。
シャトーフィジャック
サンテミリオンの名シャトー
所有している畑は40haで、シュヴァル ブランに隣接しています。
栽培面積はカベルネ ソーヴィニヨン35%、カベルネ フラン35%、メルロ30%です。
メドックのような砂利質であるため、サンテミリオンでは珍しく、カベルネ ソーヴィニヨンとカベルネ フランが多い構成となっています。
また畑の周りに林があるのも特徴的です。その林は突風や伝染性の病気からブドウを守ってくれています。
収穫は手摘みで行い、厳しい選果を行います。1995年から発酵前に低温浸漬を行うようになりました。
発酵はフレンチオーク製のタンクを使用し、4時間ごとにルモンタージュを行います。
2000年からピジャージュも取り入れています。
熟成は新樽を100%使用し、18カ月おこなっています。
ここのシャトーは、後述する名前の起源から仕方がないのですが、ハイフンで結ばれるフィジャックと名乗るシャトーがいくつかあって、これがユーザーにはわかりにくいのです。
これらのシャトーも品質としては素晴らしいのですが、いまのところご本家シャトーフィジャックには追いつくことがないし、これがフィジャックの質を誤解させている感は否定できません。
所有者側もこれを理解してか、古めかしいデザインのラベル↑を使い続けて誤解を防いでいます。
ここまでしつこくワインボトルを紹介すれば大丈夫かとは思いますが、ねんのためご購入の際には確認をすることをお勧めします。
ワイナリーの歴史
フィジャックの歴史は長く、2世紀から存在していたと言われています。
また、フィジャックという名前は紀元前2世紀から3世紀のころにここを領有していたローマ人の帰属に由来するといわれていますので、相当の歴史があることがわかります。
14世紀にはレスクール家が所有していましたが、その後カーズ家、カルル家へと所有者は移っていきます。
18世紀末には高い評価を得ていて、畑も200ha程所有していました。
しかし19世紀、カルル トラジェ夫人の時代に不遇の時代を迎え、土地の分割を余儀なくされてしまいます。
サンテミリオンにはこのころ5つの有名なシャトーがあったのですが、フィジャックはその中でも最大を誇り、1833年に古い従僕の一人に与えられたのがシュバルブランになります。
(そのため当初シュバルブランはvin de figeacと名乗っていた)
1892年にアンドレ ヴィルピグの妻がフィジャックを取得しました。
この時には所有面積は激減しており、わずか37haしかありませんでした。
その後、情熱が薄れたのか、ワイン造りは他者に任せっきりで販売はネゴシアンに放り投げるような状況で、すっかり忘れ去られたシャトーになるのです。
1947年からは孫のティエリー マノンクール氏が所有し、品質の向上に励み、フィジャックのワインは輝きを取り戻していきました。
(この人のお祖父さんはパリ市の官僚で、地下鉄の建設で名をあげた)
ティエリーにとった改革とは、いろいろな種類のブドウ木を植えてワインにすることでまずは味わい、そして選別をするのです。
その結果、カベルネソーヴィニヨンを増やしてマルベックをやめることを決断し、現在の品種構成の基礎とします。
さらに醸造施設も一新し(古いほうも残している)、最新の技術を取り入れ、これが奏功するのです。
シャトーフィジャックは長い歴史を持ち、知名度も高いです。
さらにシュヴァル ブランの畑は、フィジャックのものであったこともあり、流通価格もメドックの格付け2級に匹敵するシャトーです。