
シャトー グラン ピュイ ラコスト(CHATAEU GRAND PUY LACOSTE)は、ポイヤックに位置し、メドック5級に格付けされているシャトーです。
セカンド ワインはラコスト ボリーです。
グランピュイは、訳すと「大きな山」で、その名のとおり小高い丘の頂上にあったため名付けられました。
目立たないし、もっと言えば地味な存在のシャトーなのですが、ワインの味わいは典型的なポイヤックで、その意味では通人が好むワインといえます。
レストランでソムリエさんにドンピシャでこのシャトーを注文すると「あの人はわかっている」と思われるかもしれません。
所有する畑は52haあり、栽培面積はカベルネソーヴィニヨン75%、メルロ20%、カベルネフラン5%です。
平均樹齢は40年です。
ボルドーの格付けシャトーというとどうしても1級に注目が集まりがちですが、ときには4級や5級のワインにフォーカスしてみてはいかがでしょうか。
格付けでは下であっても、格付けシャトーになることがそもそもすごいことで品質は高く、かつ、めだたないから価格は低く抑えられているのです(例外も多いですが・・・)。
ボルドーらしくそれぞれに歴史を抱えていて、これを押さえながら飲むことでより一層ワインとの付き合い方が深まるでしょう。
ここでは、その「通好みのワイン」のうちの一つをすこし覗いてみましょう。
シャトーグランピュイラコスト
二つのグランピュイ
ポイヤックには二つのグランピュイがあって、一つはここのグランピュイラコストで、もう一つがグランピュイデュカスです。
名前がここまで似ているので、勘の鋭い人は
「きっと元々は同じ畑だったけど、相続か何かで分裂したんでしょ」
と思うでしょう。
ただし畑は隣接しているのですが、シャトーそのものは↓ご覧のとおり離れています。
(ソーテルヌのシュデュイローのデュロワ家の持ち物になった時があって、このときデュロワ家は同時期にグランピュイデュカスも所有していて合体していた時があった)
徒歩で歩くと30分程度のところにあって、二つのシャトーの間にシャトークロワゼバージュやランシュバージュがあります。
二つとももともとボルドーの名家のギュイロー家の持ち物で、17世紀ころに二人の娘がいて、それぞれが家財を継いだのですが、それがラコストとデュカスなのです。
グランピュイラコストは自然を意識したワイン造りを行っており、畑での化学処理を20年前から減らしています。殺虫剤は10年前から使用していません。
収穫はすべて手摘みで行い、発酵にはステンレスタンクを使用しています。
新樽率は70%で、18~20カ月熟成させています。清澄は卵白で行い、ろ過は軽く行っています。
グラン ピュイ ラコストのスタイルは、とても豊かな要素を持ち、バランスが良く、長い熟成に耐えられるものです。
ワイナリーの歴史
ここは古くからあるシャトーで、15世紀にはドゥ ギロー氏が所有していました。
前述のよう17世紀のころに、ギロー家には二人の娘がいて、その二人がそれぞれ家財を継いで、そのうちの一つがこちらだったのですが、本家のほうはこちらとの説が強いです。
それもそのはず、グランピュイは訳すと「大きな山」で、ラコストのほうは小高い丘にありますがデュカスのほうはジロンド河沿いの低地にあるのです。
ただし名前が本家っぽいから品質が高いかといえばそうではなく、二つとも5級ではありますが2級並みの価格で取引をされることがあります。
グランピュイのワインをそれぞれ相続した二人の娘のうちの一人のほうは、女系の家族の中で持ち続けられ、そのうちの一人がラコスト家のサン・ギロンに嫁いでグランピュイラコストとなるのです。
その後家族間で所有権は引き継がれますが、1932年にはレイモン デュバン氏が購入します。
このひとはもともとランド地方の大地主でおお金持ち。かつ自分で羊の群れを飼っている風変わりなシャトーオーナーでした。
ボルドーに行けばシャトーオーナーで、ランドに戻れば羊飼いをするという、何ともうらやましい人生を送った人物で、かつグルメでも知られていました。
客のもてなし方がうまく、かつワインのコレクターでもあって、当時ボルドーきっての名物男だったのです。
しかし第二次世界大戦や世界的な不景気の影響などにより、所有していた畑は55haから25haへと減少してしまいます。
1978年にはジャン ヴジェーヌ ボリー氏が購入し、それ以降ボリー家が所有しています。
これは自分の死期をさとったのか、デュパンがなくなる少し前にまずはボリーに権利の半分を売却し、死ぬ直前にすべてを譲り渡すのです。
ボリー家はデュクリュボーカイユも所有しているワイン造りの名家で、ワインの品質にこだわりの強かったデュパンが承継を促したのでしょう。
ボリー家の所有になってから、畑を買い足し、大幅な設備投資を行います。1982年からセカンド ワインも導入し、品質の底上げをしています。
1997年には様々な大きさのステンレスタンクを導入、2003年には樽貯蔵庫の新設、2006年には選果台も最新のものを導入しています。
1990年半ばまでは品質にムラがあり、不安定だったとされています。
しかし以降目まぐるしく品質が向上し、3級に格上げしても良いという評価を得ています。