
ジャック セロスは、アヴィズを本拠地とするシャンパーニュの生産者です。
現当主のアンセルム氏は、ブルゴーニュの名門ルフレーヴでワイン醸造の研修を受け、1974年からジャック セロスを引き継いでいます。
レコルタンマニピュラン(RMを参照してください)の草分けで、世界的に大成功した新進気鋭のシャンパンハウスです。
星付きレストランの中でも、特に独創性の高い料理を提供するレストランや、あるいはノンジャンルの高級料理店で好んで用いられます。
後述しますがジャック・セロスは伝統的なシャンパーニュの造り方を無視してブルゴーニュのワインづくりのスタイルを取り入れ、高い評価を得ます。
シャンパーニュ地方はフランスのワイン業界でも最も経済的に長く成功している地域で、そのためワイン文化は大変に保守的で伝統を重んじます。
そんな伝統保守の権化のシャンパーニュ地方にあって、ジャック・セロスのワインづくりは異質で、最初は変わり者扱いを受けていたのです。
シャンパンづくりは完成までに数年かかりますので、その間のほかの生産者の冷たいなまなざしは想像に易いでしょう。
それをものともせずに完成させ、世に送り出し、そして最高の評価を得るのです。
こうなると疑心暗鬼だったほかの小規模なレコルタンマニピュランもジャック・セロスの成功に開眼され「大規模なメゾンでなくても成功できる」という気風が生まれます。
そこに新興投資家の資金流入なども後押しし、現在のレコルタンマニピュランのブームが起こるのです。
↑はジャックセロスのスタンダートクラス、イニシャルの価格推移ですが、ここ数年断続的に上がっていていつが天井かわからない状況が続いています。
この手のワインを購入する場合は、
①実際に購入して飲むお客様
②転売での投機目的
に分けられます。
②の場合、2017年の7月に買って今まで保存して売り抜ければ2割以上の利益が出ますし、中にはもっと高い価格で買う人もいます。
もちろん転売目的であっても問題ないのですが、転売が重なると保存状態の確認のしようがないため、これは注意をしなければなりません。
多くの人の手に渡ればそれだけババをつかまされる可能性が高いということで、中には粗悪な環境に置かれたワインということもありうるということでしょう。
また、中にはワインを一般消費者から安く買い取って売りさばいちゃえというところもありますので、ユーザー様には念のため慎重にご購入いただくことをお勧めします。
(ちなみにプレミアムワインの市場において日本は完全に取り残されていて、年々割り当てが少なくなってきています。)
ジャックセロス
レコルタンマニピュランの星
所有する畑はコート デ ブランに6.15ha、アンボネイに0.35haで、すべてグラン クリュです。
化学肥料や殺虫剤は使用せず、すべて手摘みで収穫を行い、1996年からはビオディナミも導入しています。
現在の当主のアンセルム氏は、ジャックセロスを引き継ぐと、醸造をブルゴーニュのように行いはじめます。
シャンパーニュは一般のワインよりも工程が複雑なため、製造技術に関して伝統的なスタイルが確立されています。
しかし同社はこれを最初から踏襲せず、独自路線を貫きます。
これは強烈な自信の表れで、確信がなければ到底貫くことのできないことでしょう。
一次発酵を約10%の新樽を含む228Lのフレンチ オークで行い、6カ月の樽熟成を行います。
ブルゴーニュの手法である新樽発酵(部分的に古樽を含む)は、シャンパーニュ地方ではまず見かけません。
そのため当初は否定的な意見もありましたが、出来上がったシャンパーニュの評価は高く、1993年には収穫したすべてのブドウを木樽で醸造しています。
マロラクティック発酵は行わず、平均2~3年の瓶内熟成を経てリリースされています。
スタンダードはイニシャル ブラン ド ブランです。
他にも多くのキュヴェをリリースしており、シュプスタンス、ロゼ、エクスキューズなどが挙げられます。
シュプスタンスはシャンパーニュでは珍しくソレラシステムを利用したキュヴェで、注目されています。
単一畑のシャンパーニュを瓶詰したリューディ シリーズはジャック セロス最高峰として、評価されています。
ワインファンとしては単純に味わいを楽しめればそれでいいでしょう。
しかしもう少し深く検討すると、この醸造スタイルをジャックセロスがシャンパーニュで貫けたことは、一つの事件だととらえることもできるでしょう。
シャンパーニュはご存じのとおりモエエシャンドンやヴーヴクリコ、ポメリーなどのように巨大企業が軒を連ねます。
大企業がシャンパンメゾンを運営する(イコール小規模生産者が参入しづらい)のには主に次のような理由があります。
・シャンパーニュ地方は冷涼なため収穫年ごとの差が激しく、そのため大量のリザーブワインをストックし、ブレンドすることで均一化させる。
・製法が特殊なため多額の資本投下が必要なため、いちブドウ生産者はおいそれとワイン造りに参入しづらい素地がある。
そのためどうしても「大量に造り、大量に売る」というマーケット主義になりやすく、これがシャンパーニュの保守主義、権威主義につながっているのです。
そこに風穴をあけたジャックセロスは、それまでのシャンパン造りにしがみついていた石頭の親爺たちに衝撃を与え、時代を一つ前に進めることになるのです。
ワイナリーの歴史
アヴィズにホテルも経営↑
1949年にジャック セロス氏により設立されました。
1974年からジャック・セロスの子のアンセルム セロス氏が引き継ぎます。
2011年にはアヴィズにホテル レストランを開業。
「スパークリング コルトンシャルルマーニュ」とアメリカのジャーナリストに評されています。
アンセルム氏自身も、ジャック セロスのシャンパーニュを白ワイングラスで飲むことをお勧めしています。
コルトンシャルルマーニュはブルゴーニュの白の中でも力強く、香りのふくらみがおおきいところに特徴があります。
この特徴をジャック・セロスが持っているため、一般的なフルートグラスでは香りを存分に楽しめないとの考えが反映されています。
またメイユール ヴァン ド フランスで、レコルタン マニピュランとして最初に3ツ星を取得し、高い評価を得ています。
シャンパーニュのカリスマとして、世界中のワイン愛好家から人気がありますが、平均年産量が4000ケースであるため、とても希少なシャンパーニュです。
なお、ユーザー様からのご紹介なのですが、ジャックセロスは過去に盗難事件があり、そのため偽造品が流通している可能性があるため、一応注意喚起を最後にしておきます。
数年前にボトル100本とラベルが1500枚盗まれた、とのことなのです(当サイトは全く知りませんでした)。
正規品はボトルの色が真っ黒ではない透明度があり、偽造品のほうはボトルの色が真っ黒に近く、これで見分けがつくそうです。
もちろん泥棒本人が飲んだ可能性もありますが、この場合は市場で売りぬく目的ととらえるのが普通でしょう。
ユーザー様からの貴重な情報を、最後ではございますがご紹介させていただきました。ありがとうございます。