シャトーキルヴァンは、第3級ながらクオリティーの高いワインを造っています。
手ごろな価格帯で人気がありますが、日本にはあまり出回っていないので目にする機会が少ないかもしれません。
格付けは3級で栽培面積35ヘクタール、年間生産量は16000ケースです。
こじんまりしていますが趣味のいいシャトーは1157年まで遡れるほどの歴史があります。
キルヴァンという珍しい発音の名前もフランス革命の1789年のころの所有者のアイリッシュ系家族のケルト語に由来するというほどの由緒です。
もともとは3級のトップに位置するほどの評価を受けていながら、不遇の時代があり、評価を地に落とします。
しかし近年の継続した努力によって品質も評価も取り戻し、現在は滑らかで上質な渋みと深い香りのこれぞボルドーのシャトーという味わいです。
マルゴーらしいしなやかさを持つワインなので、じっくりとレストランやワインバーでおいしいワインを楽しみたいというときに強くお勧めします。
シャトーキルヴァン
格付け3級トップのシャトー
シャトーキルヴァンの畑は12世紀ごろ、ギュイエンヌ(フランス南西地域)では商品としてのブドウの栽培に始まります。
時は中世、農業革命の頃です。イギリスやフランスでは鉄の生産が盛んだったことから、重量有輪犂が改良され、水車や風車も普及したころです。
シャトー・キルヴァンはブドウの商品栽培から始まったのです。
17世紀から18世紀にかけては絶対王政だった、ルイ14世の親政時代です。
このころ、イギリス人のワイン商、ジョン・コリングウッドがジロンド県メドック地区マルゴー村に16ヘクタールの畑を手に入れます。
1710年、子リングウッドの息女が結婚。
義理の息子となったのがアイルランド人のマーク・キルヴァンで、シャトーをシャトー・キルヴァンと名付けます。
当初から質の高さには定評があり、ワイン愛好家の駐仏大使、トーマス・ジェファーソン(アメリカ合衆国建国の父の1人で、後の第3代大統領)も気に入っていたとの記録があります。
1789年、フランス革命の際にシャトーは革命国家に没収されてしまいますが、その後無事に買い戻され、2つの地区にまたがっていた畑を統合。
結果、シャトー・キルヴァンは35ヘクタールとなりました。
1855年の格付けでは第3級のなかでトップ・クラスの評価も受けましたが、天候不順によるブドウの不作などもあり、経営に陰りが見え始めます。
やがてシャトーはボルドー市に寄贈され(実態は経営苦に放り出した)、市は有名なワイン商のシュレデール・エ・シラー社に販売から管理までを一任します。
シュレデール社はボルドーきってのワイン商でしたが、ワインを売るだけのキルヴァンに関してはかなりいい加減に経営をしていて、評判を地に落とします。
当たり前ですがことの成り行きで同社も販売に手が回らなくなり、1926年にボルドー市は正式に売却します。
その売却先がなんといいかげんな販売をしていたシュレデール社だったのです。
現金なことにシュレデール社はワイン生産までをすることになるといきなり経営姿勢を変えます。
ワイン造りから品質にこだわり、ワインの品質が良くなると今度は販売先にもこだわるほどの朝令暮改ぶりだったのです。
しかし一度地に堕ちた信頼を戻すのは容易ではなく、評論家たちは5級並みの評価をなかなか変えようとしませんでした。
その後長い期間をかけて徐々に品質の向上とともに評価をあげ、同社は設備投資などを行い本格的に改革に乗り出します。
1970年、三代目のジャン・アンリ・シラーが畑の改良や販路拡大に力を尽くします。
1991年には醸造家として著名な、ミッシェル・ロランをコンサルタントに迎えて近年、飛躍的に評価を上げています。
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