
MADIRAN(以下マディラン)ワインはフランス南西部のバスク・ピレネー地方が原産で、1948年にAOCの認定を受けています。
ボルドースタイルの色が濃く、渋みとアルコールの酒質を感じるフルボディのワインですが、滑らかで上質な味わいのバランスを楽しめます。
南西地方の中においては上質なワイン産地として圧倒的な知名度があり、ワイナリーによっては世界的に知られています。
コストパフォーマンスがいいためレストランでも扱いやすく、多くの飲食店でも見かけることが多いワインでしょう。
酒販店やワインショップでは2000円程度で十分に美味しいワインを見つけることができ、かつ生産者による品質の差も少ないのでデイリーワインとしても強くお勧めできます。
ちなみに、同じ地域で赤ワインと白ワインが生産されていますが、白ワインには
PACHERENC DU VIC BILH パシュラン・デュ・ヴィクビル
という別のAOCで販売されています↑。
そのためマディランといえば赤ワインを指すことになります。
パシュランデュヴィックビルの名前は覚えづらさではフランスワイン随一で、ソムリエ試験やコンクールでは受験者泣かせのAOCといえます。
マディランは、南西地方のワインとしては珍しくパリの三ツ星レストランでの取り扱いも多くあり、ハリウッドスターも自家用ジェットで買いに訪れるほどのワインなのです。
*このページはフランスワインの紹介になります。ポルトガルのマディラワインとは違いますのであらかじめご了承ください。
マディラン ワイン
ブドウの品種
マディラン地域特有の品種であるタナ(TANNAT)を40~80% 使用しています。
カベルネソーヴィニヨンやカベルネフランなどがブレンドされ、さらに深いアロマの香りが楽しめるようになっています。
タナは渋みが豊富なため保存能力が高いため、熟成によって深みを感じるワインに仕上がります。
土壌は珪土や石灰分を多く含んだ粘土質で、これと強い日照量の気象条件がタナにピッタリなのです。
ぶどう植物学者のピエールガレは著書で、「タナはおそらくマディランがその発祥で、ポルトガルのリバテージョやウルグアイにも伝播の形跡がある」と解説しています。
あまり知られていませんが、現地の醸造家はタナのパーセンテージが高いものをキューヴ・トラディショネル(伝統的仕込み方法)と呼んでいます。
彼らからすれば現地のタナこそが伝統的なブドウであって、カベルネソーヴィニヨンやカベルネフランはよそ者なのでしょう。
ところが、マディランを日本のソムリエがこぞってお勧めしていた2000年代は、「高級ボルドーっぽいワイン」として紹介されていたのです。
もっともこれは仕方のないことで、それだけマディランはボルドーの高級ワインを思わせる味わいなのです。
おそらく世界中のソムリエはマディランを「コストパフォーマンスの良いボルドーっぽいワイン」にフォーカスしてお勧めしているはず。
現地の生産者が「キューヴ トラディショネル」という言葉を使うのは、そういった紹介のされ方への葛藤と自律反発もあるのかもしれません。
マディランの特徴
タナ独特のタンニンが豊富に感じられる、コクある赤ワインとなっています。
わかいうちは濃いルビー色のような赤色で、チェリーやカシスのようなアロマが特徴となります。
濃密なフルーツのアロマながらも、渋みや酸味ともに豊かなワインです。
5~10年ほど熟成させることによってなめし皮や土のニュアンスも感じられるようになります。
もともとはタナといえば過度のタンニンが目立つ荒いブドウのイメージでした。
しかしそれでは収まらない生産者たちはタナでも品質の良いワインが造れることを立証するのです。
アラン・ブリュモンという一人の生産者が”隣接するボルドー地域に負けないワインを作ろう”としたことが始まりです。
日本のフレンチレストランなどでも有名なシャトーモンテュスは、1860年代にはすでに存在した古いシャトーでしたが、これをアランブリュモンが1979年に買収しました。
その後数年で非常に高い評価を得ることとなり、トップソムリエにもこのワインを強くお勧めする人は少なくありません。
飲み方のコツ
日本に紹介されるマディランは、ボルドースタイルの渋みが強く、かつ滑らかな上質なワインがほとんどです。
熟成にも耐え、かつリリースしたてでも柔らかく仕上がっていますので、様々な味わいを楽しめます。
飲むときは、温度は18度くらいにして、徐々に温度が上がることでより豊潤な香りを楽しめます。
グラスは大ぶりなものを選び、先がつぼまった形状のものを選びましょう。
できれば注ぐときに一本の糸のように、空気を含ませるようにグラスに注ぐことでワインは急激に空気に触れ、香りが広がります。
生産者やヴィンテージによってはオリもありますので、この場合はデカンタージュをして20分ほど待って楽しみたいワインです。
相性の良い料理
マディランは重厚な赤ワインなので肉料理でも、赤身の強い野生の鴨肉料理とのマリアージュは定番です。
他にも肉料理であれば、牛や子羊などの赤身肉のローストが相性良くなっています。
丁寧にロゼに仕上げた肉の断面は、いかにもマディランと相性がよさそうです。
また牛肉の赤ワイン煮込みが最高のマリアージュです。
チーズであれば、特に白カビやウォッシュタイプのチーズが合います。
10年以上熟成させたマディランであれば、ボルドーやブルゴーニュの上物のワインと同様にジビエに最適になります。
野生のカモ肉を熟成させ、蜂蜜風味で仕上げたカナールアピシウス(CANARD APICIUS)などは、熟成させたマディランの深い風味とジビエの持つ鉄っぽさが最高のマリアージュとなるでしょう。
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