ワイン用語集フランスワインボルドーのシャトーボルドー地方生産者

シャトームートンロートシルトとは?その特徴と歴史

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“われ1級になりぬ、かつて2級なりき。されどムートンは変わっておらず”

シャトー・ムートン・ロートシルトのエチケットに必ず記されている言葉です。

ワインファンの間ではあまりにも有名なこの言葉は、1973年の格上げを機に掲げられました。

シャトー・ムートン・ロートシルトは世界で最も偉大なシャトーの1つであり、パイオニア的存在です。

 
ロートシールトというのはドイツ語読み、

フランス語ではロッチルド、

英語ではロスチャイルドです。

 

なお、普及版の良質ワイン、ムートンカデもムートンロートシルト家の商品で、ちなみにカデは末っ子の意味です。


 

シャトームートンロートシルト

1853年の畑買収

ロンドン生まれのナサニエル・ロスチャイルドは1853年、ジロンド県メドック地区ポイヤック村のブドウ園、シャトー・ブラーヌ・ムートンを買い取りました。

これが現在のムートンロートシルトです。

すでにムートンのワインはボルドーの仲卸業者の間では品質を認められていて、シャトーマルゴーラフィットロートシルトと同程度の価格で取引されていました。

1853年といえば1855年のメドック格付けが行われる2年前ですが、このタイミングで売りに出すとは、前の所有者は何らかの事情があったのかもしれません。

(畑の買収の前にワインの格付けが行われることは知れわたっていたという説が有力です。)

 

そしてこのときに自身の名前を冠し、シャトームートンロートシルトと名称を変更するのです。

 

なお、このナサニエルの父、ネイサンの金融界での辣腕は、歴史に残る血腥いトレードにより名をとどろかせています。
 
ナポレオンのワーテルローの敗戦をいち早くキャッチすると、イギリスのコンソル公債をなげうって暴落させるのです。
 
市場参加者は暴落したニュースに飛びつき、これはきっとナポレオンの勝利の結果だと推測し、そして売りが売りを呼びます。
 
市場がパニックとなりコンソル債が暴落すると、そこで今度は大量に買い込みます。
 
そしてナポレオンの敗戦が伝わると今度は逆に暴騰して、そこで一気に売り抜け巨万の富を得るのです。

 

 

まさかの2級格付け

1855年ボルドーワインの格付けが行われます。

格付けは現在ほど精密なものではなく、ネゴシアン間の流通価格や評判などをもとに決められた閉塞感があり、批判も強かったようです。

しかし格付けをされる側は心中穏やかではありません。今後いつ格付けが見直されるともわからないのですから。

そして発表の日は近づきます。

ムートンはほかの1級ワインと同程度の価格で流通していたのでナサニエルは当然1級を予想していました。

 

 

しかし発表の結果、ムートンは2級に格付けされます。
(この理由は様々ありますが、有力な説は新規参入するロートシルト家の国籍や前述の強引な金融取引への反発があったといわれています。煎じ詰めればやっかみでしょう。)

 

“第1級たり得ずとも第2級に甘んじず。ムートンはムートンなり”

当時のエチケットにはこう刻み、ここに痛恨の極みを表します。

ナサニエルはブドウの栽培法などを見直し、シャトーの格上げを夢見て奮闘しました。

 

1973年の昇級

118年後、曾孫のフィリップ・ド・ロッチルドの卓越した手腕により、シャトー・ムートン・ロートシルトは1973年、第1級に昇格を果たします。

失われた118年間、シャトーはなんとか体を保ちますが、実態は惨憺たる有様で、複数の従業員による横領さえありました。

しかしオーナーとなったフィリップは彼らを罰することはせず、逆に彼らの意見に耳を傾け、信頼関係を作っていくのです。

 

また、それまでの慣行を破って、醸造したワインを熟成、瓶詰めまでを手掛ける、元詰め方式を採用(それまでは瓶詰めは特定のネゴシアンが行っていました)。

ブルゴーニュのドメーヌと同様の品質管理の徹底をはかります。

これは不正を根絶し、独自のワインを確立するのが容易になるというメリットがありますが、ブルゴーニュのドメーヌとは規模が違い畑が広大ですので簡単なことではありません。

メドック1級を狙った品質をコントロールすることが、どれほどのことかは想像を絶する努力があったのでしょう。

 

この”シャトー元詰制度”は、ムートンが1924年からほかのグランクリュにも呼びかけ、1970年代になって確立するようになりました。
 
これはつまり、それまで瓶詰めを依頼していたネゴシアンとの決別を意味します。
 
1924年ころはボルドーは不遇の時代で、各シャトーともネゴシアンとのもたれあいの長期契約がなければ成り立たないところも多く、当初はシャトー元詰めは受け入れてもらえなかったのです。
 
おそらく様々な嫌がらせもあったでしょうし、業界内の圧力もあったことでしょう。
 
ある種の業界内の革命的な呼びかけが確立したころの1級昇格ですから、勝利の美酒もまた格別だったでしょう。

 

 

アートラベルの考案

第二次世界大戦後、フィリップは斬新なアイディアを思いつきます。

画家の絵をエチケットにデザインしたのです。これにより、ピカソやシャガールなどの絵がムートンのエチケットを彩ってきました。

毎年変わる、エチケットに魅せられたコレクターが現在も数多くいます。

これらの功績が認められてシャトー・ムートン・ロートシルトは第1級に格上げされたのです。

 

ムートン ラベル一覧

ムートンのラベルの作者は以下のとおり

 

1924  Jean Carlu ジャン カルル

1945  Philippe Jullian フィリップ ジュリアン

1946  Jean Hugo ジャン ユーゴ―

1947  Jean Cocteau ジャン コクトー

1948  Marie Laurencin マリー ローランサン

1949  André Dignimont アンドレ ディニモン

1950  Georges Arnulf ジョルジュ アルヌルフ

1951  Marcel Vertès マルセル ヴェルト

1952  Léonor Fini レオノール フィニ

1953  Année du Centenaire*

1954  Jean Carzou ジャン カルズー

1955  Georges Braque ジョルジュ ブラック

1956  Pavel Tchelitchev パヴェル チェリチェフ

1957  André Masson アンドレ マッソン

1958  Salvador Dalí サルバドール ダリ

1959  Richard Lippold リチャード リッポルド

1960  Jacques Villon ジャック ヴィロン

1961  Georges Mathieu ジョルジュ マシュー

1962  Matta マッタ

1963  Bernard Dufour ベルナール デュフール

1964  Henry Moore アンリ ムーア

1965  Dorothea Tanning ドロテア タニング

1966  Pierre Alechinsky ピエール アレキンスキー

1967  César セザール

1968  Bona ボナ

1969  Joan Miró ジャン ミロ

1970  Marc Chagall マルク シャガール

1971  Wassily Kandinsky ワッシリー カンディンスキー

1972  Serge Poliakoff セルジュ ポリアコフ

1973  Pablo Picasso パブロ ピカソ

1974  Robert Motherwell ロバート マザーウェル

1975  Andy Warhol アンディ ウオーホール

1976  Pierre Soulages ピエール スーラ―ジュ

1977  Hommage à Sa Majesté la Reine Mère d’Angleterre  ハーマジェスティ―クイーンエリザベス

1978  Jean-Paul Riopelle ジャンポール リオペル

1979  Hisao Domoto 堂本尚郎

1980  Hans Hartung ハンス アルトゥング

1981  Arman アルマン

1982  John Huston ジョン ヒューストン

1983  Saul Steinberg ソウル シュタインベルグ

1984  Agam アガム

1985  Paul Delvaux ポール デルヴォー

1986  Bernard Séjourné ベルナール セジュルネ

1987  Hans Erni ハンス エルニ

1988  Keith Haring ケイト ハリング

1989  Georg Baselitz ジョルジュ バセリッツ

1990  Francis Bacon フランシス ベーコン

1991  Setsuko セツコ

1992  Per Kirkeby ペール キルケビー

1993  Balthus  バルテュス

1994  Karel Appel カーレル アペル

1995  Antoni Tàpies アントニ タピエス

1996  Gu Gan グー ガン

1997  Niki de Saint Phalle ニキ ド サン ファル

1998  Rufino Tamayo ルフィーノ タマヨ

1999  Raymond Savignac レイモン サヴィニャック

2000  Le petit bélier d’Augsburg

2001  Robert Wilson ロバートウィルソン

2002  Ilya Kabakov イリヤ カバコフ

2003  Hommage à un cent cinquantenaire 150周年記念ラベル

2004  Prince Charles プリンス チャールズ

2005  Giuseppe Penone ジュゼッペ ペノーネ

2006  Lucian Freud ルシアン フロイド

2007  Bernar Venet ベルナール ヴェネ

2008  Xu Lei シュ レイ

2009  Anish Kapoor アニッシュ カプーア

2010  Jeff Koons ジェフ クーンズ

2011  Guy de Rougemont ギィ ドゥ ルージュモン

2012  Miquel Barceló ミゲール バルセロ

2013  Lee Ufan リー ウーファン

2014  David Hockney デイヴィッド ホックニー

2015  Gerhard Richter ゲハルト リヒター