
シャトー ピション ロングヴィル バロンはポイヤックに位置し、メドックで2級に格付けされているシャトーです。
同じく2級のシャトー ピションロングヴィルコンテスドラランドとは元々同じシャトーでした。
セカンド ワインはレ トゥーレル ド ロングヴィルです。
所有する畑は約70haで、1級に格付けされているシャトー ラトゥールに街道を挟んで隣接しており、ポイヤックでも好立地にあります。
作付面積はおおよそカベルネ ソーヴィニヨン75%、メルロ25%で、これに若干のカベルネフランとプティヴェルドが混醸され、いかにもポイヤックらしい構成です。

後述しますがポイヤックの中でもこことピションラランドのいわゆる”二つのピション”は1級御三家の後を走るワインとしてよく対比されます。
ピションラランドのほうは白地に金の文字のおとなしいラベルであるのに対してこちらは盾の紋章に二匹のグリフォンがたっています↑。
グリフォンは鷲の頭と翼をもち、体はライオンという何とも勇ましいいでたちで、それと盾の組み合わせは、「おれこそ男の中の男のワインだ」といわんばかりでしょう。
長年それに味をあわせてきたのか、飲みごたえがあっていかにも男性的な印象です。
シャトーピションロングヴィルバロン
二つのピション
土壌の個性を大事とした減農薬農法(リュットレゾネ)で栽培されています。
畑には砂利が多く混ざっており、その砂利が寒暖差を生み出し、ブドウに良いストレスを与えます。
平均樹齢は若めですが、密植率が1haあたり9000本と非常に高くなっており、地中深くまで根が届くように工夫しているのです。
発酵はステンレスタンクで行われますが、マロラクティック発酵は樽内で行われます。新樽率は約70%で、15~18カ月熟成されます。
ポイヤックには二つのピションがあり、一つはこちらのピションロングヴィルバロン、もう一つがピションロングヴィルコンテスドラランドです。
後述しますがラランドのほうはコンテス(伯爵夫人)が起源となっていて、その名のとおり口当たりは柔らかく、メルローの比率が高いため熟成も早く進みます。
バロン(男爵)のほうはその名のとおり比べると男性的で渋みが堅く、歴史を知ったうえで二つを飲み比べてみるとなかなか面白いかもしれません。
シャトーピションロングビルコンテスドラランドについては、こちらをご参考ください。
ワイナリーの歴史
ピション ロングヴィルの歴史は17世紀後半に、ピエール ド ムジュール ドゥ ローザン氏が取得した畑から始まったとされています。
その後1694年に娘のテレーズ女史が、ジャック ドゥ ピション ロングヴィル氏と結婚し、発展していきます。
このころにはすでにデュクリュボーカイユやムートンロートシルトなどと肩を並べる評価を得ていたのです。
その後いくつかの所有者の変更があり、そして18世紀後半、ロングヴィルバロンもフランス革命を迎えることになります。
1755年うまれのオーナー、ジョセフは強運の持ち主で、1789年のフランス革命の時に、身の危険を感じパンかごに隠れて8日間身を潜め命拾いをします。
ギロチンに消える運命をパンかごで変え、その後に95歳まで生きるということに成功するのですから、パンかごには頭が上がらないでしょう。
そのジョセフも1850年に亡くなり、当時のナポレオン民法によってシャトーは5人の子供に分割されます。
しかし、シャトーは分割できないし、畑も分けられないのであいまいなままにされていたのです。
そしてこの時にもともとあったシャトーがピションロングヴィルバロンなのです。
(1840年代にジョセフの娘のマリーはシャトーラトゥールのボーモン伯爵の愛人となり、ラトゥールの近くの畑を譲り受け、シャトーを建てますが、これがピションコンテスドラランドです。)
その後にいくつかのオーナーの変遷があり、世界的不景気まっただなかの1933年に、落ち目だったバロンをブッティエ家が購入します。
同家はシャトーパルメの株主であるとともにグランピュイデュカスの主要株主でもありました(のちに売却)。
そのころのロングヴィルバロンはシャトーにはだれも住まず、荒れていて評価はいまいちでした。
ところが、です。
1987年にブッティエ家は一大決心をします。
アクサ保険のグループ会社であるアクサ ミレジムに売却をするのですが、このときの同社のワイン部門の長がシャトーランシュバージュのジャン・ミシェル・カーズ氏なのです。
カーズ氏はピションバロンの品質を急激に回復させ、評価を取り戻します。
そして得た利益で醸造設備はもとよりシャトーそのものにも積極的な設備投資を行うのです。
アクサ ミレジムに買収されてから様々な改革が行われており、特に環境への配慮からワインの質を高めています。
Terra Vitisの認証を受けたり、環境マネジメントシステム規格の「ISO14001」を取得している、ボルドーで数少ないシャトーです。
ピション ロングヴィル バロンでは、すでにアクサ ミレジムによって様々な改革がされていますが、これからの動向も注目されているシャトーです。