
タヴェル(TAVEL)はローヌ南部の中でもロゼワインのみが生産されるAOCで、ルイ14世など数多くの著名人にも愛されたワインです。
ヘミングウェイは、「エデンの園」の中で「恋人たちには素敵なワイン」と紹介しています。
同じようなタイプのリラックに隣接していますが、リラックが赤白ロゼがすべて認められているのに対してタヴェルはロゼのみのAOCです。
日本では知られていませんが、タヴェルはフランス本土ではおそらくもっとも評価の高いロゼワインです。
ほかのロゼダンジュやコートドプロヴァンスよりも色が濃く、造り方もこだわった生産者が多いのが特徴です。
約950ヘクタールの指定栽培面積、年産約40000ヘクトリットル強のワインを生産しています。
ロゼワインというとどうしても雰囲気重視というか、地中海の青い海と白い砂浜が見えるテラスで優雅に飲むイメージがあります。
リゾートで開放的な気分の時に飲むワインとなると、やはり品質として”カジュアル路線=通人好みではない”のではないか、というのが成熟市場の心理というものでしょう。
実際にあの楽園の中で飲めばなんでもうまく感じますし、働くひとも毎日厳しくやるのもあれなんでという気持ちになるのも無理はありません。
その中にあってタヴェルは骨っぽく、飲みごたえがあって高級料理に合わせやすいものも多く、ワインファンであれば一度試しておきたいところでしょう。
タヴェル ロゼ
ロゼワインの苦境
ロゼワインに対するワインファンの嗜好は、ずいぶんと時代に流されてきました。
中世では王侯貴族の愛飲酒としてたのしまれてきましたし、ボルドーワインがイギリスで大流行した時もクラレットといってあかるいロゼ色のワインがもてはやされたのです。
また、第二次大戦以降もポルトガルのマテウスロゼの世界的ヒットにみられるように、ロゼワインは確かにワインの最先端の人気商品だったのです。
しかし、1980年代以降ワインジャーナリストが台頭し、マーケットに必要なワインの基礎知識が一般の消費者にも浸透すると、どうしてもキャッチーなイメージのロゼワインは人気に陰りが出てしまうのです。
全体的なロゼワインの地盤沈下はその通りなのですが、タヴェルのロゼはしっかりして飲みごたえがあり、辛口なので現代人の食生活にもマッチしています。
そう考えるともっとフォーカスされてもいいワインだろうし、さらにマーケットが成熟すれば「ロゼワインであってもタヴェルは違う」という見方をするワインファンももっと出てきてもいいかもしれません。
ワインの全体像
ローヌ南部のローヌ川右岸に位置し、地理的にはラングドック・ルーションになりますが、ワインはローヌワインに含まれています。
ブドウの栽培面積は約950haとなり、複雑なテロワールとしても知られています。
砂利質の土壌と、石灰岩、丸石の3種類に分かれているのです。
ロゼワインのみを生産する珍しいAOCで、グルナッシュを主体としてシラーやムールヴェードル、サンソーなどを栽培しています。
単一のブドウ品種の使用上限は60%に規定され、残りは10%未満の補助品種を混醸します。
フランスのロゼのAOCとしては最も早く認定されたことでも知られており、1936年にはAOCワインとして認定されていました。
ちなみに、グルナッシュは比率があまり大きくするとオレンジの色調が出やすくなり、ロゼワインとしては魅力が半減すると考える生産者がこの地域にはいます。
そのためグルナッシュをベースに色を引き出すためにシラー、深みをつけるためにムールヴェードルを使うというのが現在のタヴェルロゼのスタイルなのでしょう。
ワインの味わい
タヴェルのロゼワインは、アルコール度数が高いことでも知られています。
ロゼダンジュの弱甘口とは対照的で、辛口のロゼワインとなります。
オレンジがかった美しいサーモン色で、イチゴなどの赤い果実や白い花のアロマを感じられるロゼワインです。
エレガントな味わいと上品さが味わい深く、熟したフルーツの香りがゴージャスさを与えるロゼワインです。
ロゼワインは長期熟成には向いていないものが多い中、タヴェルは10年以上の熟成にも耐えられるポテンシャルがあります。
また、新酒の規定もあるのでヌーヴォーワインも造られます(日本にはほとんど入ってこない)。
楽しみ方のコツ
ロゼワインなので、基本的にはすべて料理に合わせやすくなっています。
ただし辛口なので、ロゼダンジュのように初心者向けの優しいワイン、というよりももう少しワインに慣れたころに楽しみたいワインですね。
8度くらいに冷やし、小ぶりのチューリップグラスがあれば、特にグラスは気を使わなくても大丈夫でしょう。
また、せっかくのロゼワインの美しい外観を楽しめるように、テラスで天気のいい日に楽しめれば最高のシチュエーションといえます。
フルーティーなアロマなので魚料理やスパイスを用いた料理との相性も良いですが、赤ワインに近いコクがあるため軽めの肉料理との相性も良くなっています。
特に中華料理とのマリアージュは素晴らしく、パリの中華料理店の中でも特にワインとのペアリングに力を入れるお店にはタヴェルが置かれていることがおおいです。
フランスのロゼワインでは、知名度としてはタヴェルとロゼダンジュー、プロヴァンスロゼが際立っています。
その中にあってタヴェルは他の二つと違って、ロゼとはいっても橙がかっていて酸味も果実味も一本筋が通り、ようするに通好みの味わいなのです。
飲みごたえもあって肉料理にも堂々と合わせられる酒質のものも多く、おそらくロゼワインの印象ががらりと変わるワインでしょう。
「そろそろ新しいワインを発掘しよう」というときには候補の一つにいれてみてはいかがでしょうか。