ヴァラエタルワインとは、ブドウ品種をラベルに明記したワインのことで、主にアメリカやオーストラリアなどのいわゆるニューワールドで採用されています。
もっとも、ヴァラエタルワイン(VARIETAL WINE)はワイン用につくった造語と言われています。
variety(種類)から由来する言葉であることはわかりますが、もともとヴァラエタルという言葉はなかったのです。
ヴァラエタルワインはユーザーにとってわかりやすく、マーケット的には当然受け入れるべき制度でしょう。
ここでその全体像と事の成り行きを見てみましょう。
ヴァラエタルワインとは?
ブドウ品種を明記したワイン
それまでのフランスやイタリアなどの伝統的な生産国は、ラベルを見てもブドウ品種は記載されていないためユーザーがいちいちブドウ品種を調べる必要がありました。
例えばシャブリであればシャルドネというブドウを使うのですが、これを覚えていないといけないという面倒をユーザーが負っているのです。
↑例えばこのラベルのように、シャブリという名称はわかっていても肝心のブドウ品種はどこにも記載はありません。
シャブリのようなワインの呼称はそれこそ無数にあるのですが、これを理解する面倒をユーザーに負担させているのは現代のマーケットにはなじまないといえるでしょう。
そのためユーザーは実際の味わいがイメージしにくいため、購入のハードルを上げてしまうのです。
ところが↓のラベルのように、ブドウ品種が明記してあればユーザーは「シャルドネのイメージ」さえあればいいわけで、その他の表記は特に無視しても何とかなるわけです。
これはオーストラリアのワインのラベル↑ですが、基本的にヨーロッパの伝統的な生産国以外はほとんどがヴァラエタルワインといっていいでしょう。
・アメリカ
・オーストラリア
・チリ
これらの日本にとって重要なワイン生産国はすべてヴァラエタルワインの制度を取り入れています。
なぜヴァラエタルワインが生まれたの?
もともと現代のワイン文化はヨーロッパに起源があって、フランスやイタリアのワインの味わいが世界に広まったといってもいいでしょう。
その中で、ヴァラエタルワインの精度を取り入れる国々にはワインを取り締まる法律が存在しませんでした。
そうなるとまがい物や偽りのワインが横行するようになり、例えばアメリカでは甘口ワインをソターン(ソーテルヌの英語読み)や辛口白ワインをシャブリとして販売することが普通のことのようになってしまっていたのです。
こうなるともはやラベルとワインの中身との一致性は約束されません。
乱暴な表現をすれば、「どうせ消費者なんて分かりっこないんだから売れれば中身なんてどうでもいい」というスタンスでワイン消費は行われることになるのです。
こうなると伝統国の生産者はたまったものではありませんし、消費者はまがい物を買わされることになってしまいます。
そのため規制をかける形で何らかの制度を法律で縛る必要が生まれます。
そこでこれまでのフランスやイタリアの法律の仕組みを検討すると、前述のようにユーザーにとって利便性が追求されていない仕組みであることが判明します。
そしてワインのマーケット拡大を考えてヴァラエタルワインという仕組みを採用し、より分かりやすく、より親しみやすくさせているのです。
ヴァラエタルワインのデメリット
このようにヴァラエタルワインはブドウ品種を明記しているため、ユーザーにとってはメリットの大きな制度であることはわかっていただけたと思います。
ただしヴァラエタルワインにもデメリットがありますので、ここで付言しておきます。
ヴァラエタルワインのデメリットはワインの特質でもある多様性が失われてしまうという可能性を秘めていることでしょう。
ヴァラエタルワインはわかりやすいので、どうしても消費者にとってなじみのあるシャルドネやカベルネソーヴィニヨンなどの国際品種にとって有利な制度になってしまうのです。
そのため生産者はその地方固有の品種を栽培していても、マーケットになじまないと判断すればメジャーな国際品種に植え替えることは容易に想像できます。
こうなると、例えば
「あそこの島には古くから固有の〇〇という品種が栽培されていて、個性的なんだけどこれがうまいんだよ」
という多様性を失ってしまうという可能性はやはりぬぐえないでしょう。
もちろんこれは生産者にとってもユーザーにとっても仕方のない流れかもしれませんが、マーケットを優先するがあまりにおこる現象については確認をしておきましょう。