
フランス ブルゴーニュ地方の一番南にあるボジョレー地区は、白やロゼワインも少量生産されているものの赤ワインが主流です。
世界的に有名なボジョレーヌーボーは、ここで生産されます。
一般的なブルゴーニュのイメージと違い、日照量も豊富で糖分が上がりやすく、それがこの地のブドウ品種と醸造方法にぴったりだったのです。
日本でもボジョレーヌーボーはよく知られており、もちろん日本以外にも、世界的に人気の高い赤ワインの生産地となっています。
ほんの半世紀前は、ボジョレーはリヨンの街でのどを乾かしている人のために生産されているようなワインでした。
そのため「リヨンの街には川が三本流れている。ローヌ川、ソーヌ川、そしてボジョレーさ」という言葉まで生まれたのです。
それが世界的なワインイベントを造るまでになったのは、ほかでもない新酒の概念と、マセラシオンカルボニックなのです。
11月の解禁日は、どこのテレビ局をみてもボジョレーヌーボーのことを紹介しています。
「テレビで紹介していたから」飲むのもいいですが、すこしここでボジョレーワインの全体像を押さえましょう。
ここでは、ボジョレーヌーボーの基礎知識としてボジョレー地区のワインの総論をまとめています。
できればボジョレーヌーボーの生産方法であるマセラシオンカルボニックを知ると、より一層ワインがおいしくなります。
また、当サイトの性質上、ある程度の広範囲をご紹介しているため、すべてを読み込むのはお手間かもしれません。
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ボジョレーパーティーやテレビなどで必要な知識はこちらだけで問題ありません。
Contents
ボジョレー地区のワイン
ワインの特徴
ボジョレー地区の赤ワインは、フルーティーで軽い飲み口のカジュアルな赤ワインとなります。
ルビー色で第二アロマの香りが華やかで、渋みがほとんど感じられず、飲みやすいですね。
これらのワインは、ほとんどが
ボジョレーBEAUJOLAIS
もしくは
ボジョレーヴィラージュ
BRAUJOLAIS VILLAGE
とラベルに記載していると思います。
これらは複数の畑のブドウをブレンドして均一化させて大量に売り出します。
テレビで紹介する「ボジョレーヌーボー」とは、これらの二つのワインを刺していると考えてほぼ間違いないでしょう。
クリュボジョレー
ボジョレー地区の中には10の個別のAOCがあり、それらはクリュボジョレーと呼ばれる村名クラスになります。
これらクリュボジョレーは、ボジョレーヌーボーとはちがい、均一的な品質ではなく、それぞれに個性があって、その個性が評価につながるワインです。
・サンタムール Sainte Amour
・ジュリエナ Julienas
・シェナ Chenas
・ムーランナヴァン Moulin A Vent
・フルーリー Fleurie
・シルーブル Chiroubles
・モルゴン Morgon
・レニエ Regnie
・ブルイイ Brouilly
・コート・ド・ブルイイ Cote de Brouilly
これらの村名ワインは一般的なボジョレーヌーボーのイメージとは違い、ボディがあり、熟成に耐える品質のワインです。
とくにムーランナヴァンはボジョレーの中でも最高品質と呼ばれるAOCで、長期熟成させることで優雅さとアロマが増していきます。
一方でフルーリーは、ボジョレーの中でも最も女性的なワインとして知られています。
エレガントで洗練されたワインとなり、熟成させることでスパイスを感じられます。
もっとも、クリュボジョレーの生産量は早飲みのボジョレーに比べると大変に少なく、日本ではほとんど見かけられません。
日本で人気の高いボジョレー・ヌーヴォーは、ボジョレーの中でも生産量が多く、しっかりした早飲みタイプのワインになります。
ブドウ品種
ボジョレー地区の赤ワインは主にガメイ種を用いています。
ブルゴーニュ地方の中でも恵まれた気候のため、ガメイが重宝されるのです。
ボジョレーは花崗岩質土壌のため、昼間に蓄えた陽の光を夜に発散するため、糖分が上がりやすく、ブドウの新陳代謝が進みのです。
こうなると、ピノノワールの繊細なつくりよりも、ガメイのように生命力が強くて生産量のおおい品種のほうが向いています。
ただし、ガメイは品種の個性に乏しく、それがマセラシオンカルボニックを生ませたといっていいでしょう。
また、少ないながらも生産されている白ワインはシャルドネ種を使用したものに限られています。
ボジョレーヌーボーの基礎知識とテイスティング
さあ、ではここでようやくボジョレーヌーボーで知っておきたい知識とテイスティングをご紹介します。
ここまでご紹介しましたが、
・フランス、ブルゴーニュ地方最南部のボジョレー地区のワイン
・ブドウ品種はガメイ
・醸造方法はマセラシオンカルボニック
・花崗岩質土壌のため、ブドウの新陳代謝が早く進む
・今年収穫されたブドウを11月の第三木曜日に解禁する新酒
まずはここを押さえましょう。
そのうえで、ボジョレーパーティー等ではテイスティングコメントも知っていればより一層楽しみが広がります。
まず、外観は明るい紫がかったルビー色です。
紫はワインがまだ若々しい証拠ですから、ボジョレーヌーボーは紫色が感じられないといけないのです。
ワインによってはピンク色も見えるでしょう。
香りは、何といってもバナナの香りが特徴的です。
ボジョレーヌーボーを飲むときはバナナの香りを思い浮かべながら香りをかいでみてください。
きっとびっくりするくらいドンピシャな香りを感じることができるでしょう。
これは第2アロマと言って、発酵によって生じる香りです。
ボジョレーヌーボーはつい先日発酵が終わったようなものですから、第2アロマがよく出ているのです。
さらに、キイチゴやイチゴ、赤い花やキャンディーのような香りが感じられ、とにかくフレッシュで華やかな印象です。
味わいは、赤ワインなのに渋みをほとんど感じません。
また、果実味が豊かで飲みやすく、そのためぐいぐい飲めてしまうのです。
これだけ知っていれば、ボジョレーパーティーを何倍も楽しめるでしょう。
11月の第三木曜日に解禁!の真実・・・
ボジョレー・ヌーヴォーは、毎年11月の第三木曜日の午前0時に新酒が解禁され、世界に出荷されます。
「ボジョレー・ヌーヴォー解禁」として日本では毎年話題になりますが、驚くのが世界に出荷される半数が日本なのです。
本来は、その年のブドウの出来栄えを確認するためのイベントでしたが、現在では販促として確立されて、解禁に合わせて飲まれるようになりました。
夢のない話かもしれませんが、前述のとおり、ガメイは品種の個性に乏しく、マーケット的にいまひとつインパクトに欠けるのです。
とはいえ、ガメイは生命力が強く、大量に生産される特徴がありますので、それを生かして収穫の年に瓶詰めをして売り出す手法(これをプリムールと言います)を考え付きます。
新しいもの好きなのは、どこの国も同様ですが、それがボジョレーヌーボーの始まりと言われていています。
ブドウの個性がとぼしいのを補う目的で行われる手法には、シュールリー製法のミュスカデも同様にとらえられています。
合わせる料理
ボジョレーヌーボーはもともと早飲みの気軽なタイプのワインです。
渋味もすくなく、のみやすく、癖がありません。
そのため料理とのマッチングを追求するというよりはワイン単体で楽しむか、あるいは軽めの前菜と楽しむのがベストでしょう。
例えばリヨンの郷土料理である豚肉の加工食品と合わせるのもいいでしょう。
クリュボジョレーであれば、ボディも強く、渋みも感じられますので、熟成を経たものであれば赤身肉の煮込みにも合わせやすくなります。
大胆な組み合わせではありますが、例えば焼肉は赤身のお肉を濃いめのたれにつけて食べますが、クリュボジョレーを合わせることで、肉の脂肪分が中和されて食欲が増します。
もし、焼肉パーティーにワインを、というリクエストの場合は、ぜひクリュボジョレーを試してみてください。